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子どもアイケアガイド #01

【眼科医監修】子どもの近視が進む原因は? 眼科医がおすすめする予防対策や受診のタイミング

2022.04.07

家の中で過ごす時間が長くなり外で遊ぶ時間が減ると、近視が進みやすいと言われています。親としては心配な子どもの視力について、2人のお子さんを育てる母でもある眼科医の森紀和子先生にお話を伺いました。近視が進行する原因を知り、家庭でできる予防対策をぜひ参考にしてください。

目次
  1. 1過去40年で近視の小学生が急増!
  2. 2スマホやゲームと近視進行の関係性
  3. 3親が子どもの近視進行に気づくサインとは?
  4. 4子どもの近視を疑ったらいつ受診する?
  5. 5近視の進行を防ぐ2つの対策とは?
お話を伺ったのはこの方
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森 紀和子先生

福島県立医科大学医学部卒業。信州大学医学部眼科学教室を経て近視研究のため慶應義塾大学医学研究科大学院眼科学専攻博士課程入学。同大学院修了、医学博士。慶應義塾大学眼科学教室特任講師。現在は臨床、近視抑制法に関する研究を中心に行っている。

過去40年で近視の小学生が急増!

子どもたちの近視が増えているという話を耳にしますが、本当ですか?

1984年、1996年(※1)、2017年(※2)という3つの年代で国内の子どもたちの近視人口を調べたデータが論文として発表されています。それを比較すると、7歳の子どもの近視の割合が、1984年と1996年は20%未満だったのに対し、2017年では70%を超えています。10歳頃の子どもの同年の数字を見ると実に80%超えです(図1)。

(図1)日本における近視人口の割合
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※1:Matsumura H et al. Surv Ophthalmol. 1999
※2:Yotsukura E, Torii H et al. JAMA Ophthalmology. 2019.

驚くべき差ですね。近視の子どもたちの増加が、なぜここまで進んでいるのでしょうか。

要因はさまざまありますが、遺伝と環境が大きく影響しています。まず親が近視の場合、子どもが近視になるリスクは上がります。(※3)

そして環境的要因ですが、現代は外遊びの時間が減り、家の中で過ごす時間が増えました。2020年以降のコロナ禍では特にそうでしょう。外に出て日光に当たらないと、近視が進行することがわかってきました。

※3:Low W et al. Br J Ophthalmol. 2010
   Chua SY et al; Invest Ophthalmol Vis Sci. 2015
   Jiang X et al; JAMA Ophthalmol. 2020

屋外で浴びる日光が近視の進行に影響をしているということでしょうか?

そうです。それが近年の近視にまつわる大きな新知見ですね。ご家庭でできるものとして取り入れていただきたいのは、1日に2時間は外で遊ぶこと。最近の研究では、太陽光も近視の進行をゆるやかにする一因として重要であることがわかってきています。太陽光の中に含まれる波長に近視の進行をゆるやかに抑制する効果があることがわかりました。

その一つにバイオレットライトがあり、これは紫外線に近い380nm(ナノメートル)付近の紫色の光です。バイオレットライトは蛍光灯やLEDの光には含まれていません。また、最近の窓ガラスやメガネのレンズは大半が紫外線をしっかりカットするように作られているため、明るい夏でも室内にいる限りは、バイオレットライトは目にほぼ届かないことも確認されています。

つまり、外遊びなどで太陽光を浴びることが近視の“予防”になっていたのですが、最近は家の中で遊ぶ時間が増え、バイオレットライトの効果が薄れて近視の子どもが増えたのではないか、とも考えられています。

スマホやゲームと近視進行の関係性

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スマホやビデオゲームは近視の進行に影響していますか?

ゲームをする時間と屋外で過ごす時間が、どのように近視と関係しているかを示すデータがあります。ビデオゲームを週4時間以上する子どもの場合、近視になるリスクはビデオゲームをしない子どもに比べて8.1倍に達することがわかっています。一方、週14時間以上を屋外で遊ぶ子どもは、14時間未満の子どもに比べ、リスクが0.2倍に下がっています。(※4)

※4:Saxena R et al. PLoS One. 2015

つまり、スマホやゲームのような“至近距離”が近視を助長させているということですか?

基本的には前述のように、外遊びをしないことがバイオレットライトの不足をもたらし、近視が進行する、というメカニズムがあると思います。それに加えて、テレビにつなげて、ある程度の距離を確保できるビデオゲームの場合は、近視リスクがそれほど上がらないという議論もあります。まだはっきりとわかっていませんが、距離は近視の悪化の要因の一つと言えるかもしれません。

また、近くのものに焦点を合わせる「近業」が続くと、眼球の大きさ(眼軸長・がんじくちょう)が伸び、近視が進行します。受験などで勉強に集中し近業が増えていることも、子どもの近視が増加している背景にあると思っています。

親が子どもの近視進行に
気づくサインとは?

子どもが近視になると、どんな変化がありますか?

近視の子どもは近い距離は見えているため、家の中では意外と異変に気づきにくいかもしれません。眼科を受診して初めて自分の子どもの近視を知り、驚く親も少なくありません。

近視が強くなると姿勢が悪くなりやすいということは言えますね。もっとよく見ようとゲームや本と目の距離を近づける、なかにはテレビを見るときだけ近づいて見ていたという子もいました。子どもの行動の変化が近視の発見のサインになることはあります。

逆に、屋外にいると近視の進行のサインに気づきやすいのですか?

外であれば子どもとの会話の中で、気づくチャンスがあるのではないでしょうか。「あそこに小鳥さんいるね」「あの看板に何て書いてある?」などと質問してみると、今まで見えていたのに見えなくなってきたということが近視の子どもにはあります。

目を細めるしぐさは近視の進行のサインでしょうか。

目を細めるのはわかりやすい徴候ですが、その頃にはかなり近視が進行していると考えてください。定期的に眼科を受診することで、そのように進行する前に近視を発見できます。

子どもの近視を疑ったら
いつ受診する?

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子どもの近視を疑ったら、どのタイミングで眼科を受診するのがおすすめですか?

受診をおすすめするタイミングはいくつかあります。

まず、学校の視力検査でA判定がBになった、B判定がCになったなど、変化が見えたとき。眼科医としては両目がA・A判定でない限り受診してほしいと思います。また、先ほどお伝えしたように、親が近視であれば遺伝で子どもが近視になる可能性が高まります。早めの受診、定期的な受診を心がけてください。

受診が遅れるとどんなリスクが考えられますか?

近視が強くなる強度近視になると、緑内障や、近視性脈絡膜新生血管症(きんしせいみゃくらくまくしんせいけっかんしょう)、網膜剥離(もうまくはくり)といった合併症を将来発症するリスクが高くなります。近視が進行しやすい子どもの頃に予防をしたり治療をしたりすることは、大人になってからの自分を守ることにもつながります。今は近視の進行を遅らせる治療も始まっていて、進行をゆるやかにするメガネも開発されています。できるだけ強度の近視にならないように早い時期から治療をスタートすることをおすすめします。近視を軽く考えず、積極的に眼科を受診してほしいと思います。

近視の進行を防ぐ2つの対策とは?

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普段から近視の進行を防ぐために、家庭でできることはありますか?

まず屋外で太陽光を浴びることです。1日2時間、週14時間以上を屋外で過ごすよう頑張ってみてください。学校の休み時間は外で遊ぶ、週末はできる限り外出するといった工夫をしていただくなど。

あとはもちろん、スマホやゲームで遊ぶ時間を極力減らし、そして「目のお休みを取る」ことも重要です。

目のお休みとは?

近くを見る作業をすると過緊張な状態が続き、近視が強くなってしまうと言われています。そのため、集中して目を使ったら定期的にお休みを取る必要があります。小学校の授業もだいたい1コマが45分ですよね。受験期ならさらに集中して目を使っていると思うので、35分程度で一度、休みを取るくらいがおすすめです。

また、年齢が低いほど短いインターバルで休憩が必要で、就学前の園児なら、さらにこまめなインターバルを取った方が良いでしょう。年齢に応じて対応していくことが良いと思っていますが、参考までに、WHO(世界保健機関)は20分ごとの目の休憩を推奨しています。

まとめ

30〜40年前と比べ、子どもの近視の割合は確実に進んでいます。外で遊ぶ時間が減り、スマホなどのデバイスを使用する時間が増えたことが大きな要因の一つのようです。コロナ禍で、家の中で過ごす時間がより増えているという事情もあります。今まで以上に子どもたちの目をケアしてあげることが大切です。

外で過ごす時間を増やし日光を浴びる、スマホやビデオゲームで遊ぶ時間を少なくするなど、森先生のアドバイスをぜひ取り入れてみてください。また、家の中では近視の進行に気づきにくいという指摘もありました。少しでも子どもの視力に不安を感じる場合は、積極的に眼科を受診した方が良いでしょう。

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